後藤健二さんへの渡航中止要請は法律で強制できなかったのか?

日本政府が後藤健二さんのイスラム国(シリア)渡航について、3回に渡り中止要請していたことが分かりました。

中止要請

外務省は2011年4月、シリア全土に「退避勧告」を発出していました。
退避勧告とは、当該地域を統治する政府・治安当局が機能していない事から、武装勢力に外国人が狙われるなど、邦人渡航者の生命に危害が及ぶ可能性が高い場合に発せられます。
後藤さんの渡航計画を把握した外務省は、2014年9月26日、この退避勧告をもとに渡航中止を電話で要請し、10月3日には後藤さんの入国を知ったため、即時退避を電話で求めました。
後藤さんが帰国した後の10月14日には、外務省職員が直接面会し、再び渡航しないよう注意喚起したということです。
150203_外務省・渡航中止に関する法律.jpg

法律で強制できなかったのか?

文字通り再三にわたる渡航中止要請にも関わらず、後藤さんはシリアへ渡り、10月末にシリア北部で行方不明になり、残念な結末は周知のとおりです。
これについては、後藤さんの自己責任論や政府の対応のまずさを指摘する意見が交わされています。
ここで、今後のために一つ指摘しておきたいのは、法律で渡航中止を強制できなかったのか、という点です。

居住・移転の自由

自民党が2月2日に開いた対策本部では、退避勧告に強制力を持たせるべきだとの意見が出ています。
しかし、憲法22条が保障する「居住・移転の自由」との兼ね合いで、渡航を禁止するのは困難であるというのが現時点での見解のようです。

私戦予備および陰謀罪

2014年には、北大生がイスラム国に戦闘員として加わることを目的に、周辺国への渡航を企てた事件がありました。
この時警視庁は、ほぼ初めて私戦予備および陰謀罪を適用し、事情聴取や家宅捜索などを行った結果、北大生はイスラム国行きを断念しています。
ただし、同罪は私的に戦闘行為をする目的が必要であるため、後藤さんのケースには当てはまりません。

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旅券法

他に手立てはないのでしょうか?
旅券法第19条第4号は、「旅券の名義人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合」に外務大臣は旅券の返納を命ずることができるとされています。
実際に、日本人女性のイスラム国への渡航をめぐり、同法適用が検討されたという情報もあります。
前述の「居住・移転の自由」との兼ね合いを気にしているのかもしれませんが、個人の権利は公共の福祉のために一定の制限を受けるはずです。
邦人がイスラム国へ誘拐され、多額の身代金を要求されたり、ヨルダンなどへ迷惑をかけることは、まさに公共の福祉に反する事態です。
退避勧告が出ている地域へ強行しようとする邦人には、旅券法を適用し、公共の福祉を守ることが必要ではないでしょうか?

まとめ

イスラム国は依然、勢力を維持しており、朝日新聞記者などが取材のために同地域へ渡るなど、第2第3の事件が発生する可能性は十分にあります。
政府や外務省は、後藤さんの犠牲を無駄にすべきではありません。
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