シリア渡航を計画していたフリーカメラマンが、外務省にパスポートを没収され、物議を醸しています。
シリア渡航を計画しパスポート没収
パスポートを没収されたのは、新潟市在住のフリーカメラマンである杉本祐一さん(58)です。
杉本さんは2015年2月27日から3月中旬までの期間、取材などのためにシリアへの入国を予定していました。
しかし2月7日の夜、自宅前に待ち構えていた外務省職員や警察官に「旅券を返納しなければ逮捕する」と告げられたということです。
杉本さんは何の罪を犯し、当局はその罪で逮捕が可能なのでしょうか?
(杉本祐一さん)
杉本祐一・カメラマンの罪と罰
旅券法19条は、「旅券の名義人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合」は、外務大臣などは旅券の返納を命令できると規定しています。
現在のシリアは、イスラム国が支配する地域が広がっている状況であり、イスラム国は既に日本人2人の生命を奪い、更に日本人を狙うことを宣言しています。
どう解釈しても、「旅券の名義人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合」に当てはまると思われます。
旅券の没収は、日本国憲法が保障する「渡航・報道の自由」に抵触する可能性はありますが、それらの人権は公共の福祉のために一定の制限を受けるというのが、一般的な考え方です。
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逮捕は可能か?
さらに、旅券法第23条は「旅券の返納を命ぜられた場合において、同項に規定する期限内にこれを返納しなかつた者」は5年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定めます。
刑事訴訟法は、①3年以上の懲役刑がある罪状で、②罪を犯したとする十分な疑いがあり、③逃亡や証拠隠滅などの恐れがある場合は、逮捕状がなくても容疑者を逮捕することができます。
今回のケースでは①、②は問題ないでしょうが、③は微妙な気もします。本当に「逮捕する!」と言ったのであれば、ここは様々な意見が出てくるでしょう。
まとめ
杉本さんはメディアに対し、「これまでも安全対策に注意してきたし、身の危険を感じれば、当然引き下がる。生きて帰って伝えるのが私の仕事だ」と話しました。
しかし、無理をしなくても極めてリスクが高いのが現在のシリア情勢です。生きて帰れる保証はどこにもないのです。
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