2019年4月19日、池袋で乗用車が暴走し、2人死亡、8人が重軽傷という事故が発生しました。
犠牲となったのは、若い母親と幼い娘さんでした…
今回は、事故の背景にある『家族』の姿を描いていきます。
◆池袋暴走事故
事故は4月19日(金)午後0時25分ごろ、東京都豊島区東池袋の都道で発生しました。
事故の概要はこんな感じです。
①暴走した乗用車(プリウス)は、まず歩道と車道を隔てる金属製の柵に接触。
②その後、約70メートル先の横断歩道を渡っていた自転車の男性をはねる。
③さらに数十メートル先の横断歩道で、母親と娘が乗った自転車をはねる。
④そして、乗用車は交差点に入って来たごみ収集車と衝突し、歩行者を巻き込む。
⑤最後は、対向のトラックと衝突して停車。
悪夢の暴走は、距離にして約150m―――。
③の過程ではねられた自転車に乗っていた、母親と娘が死亡しています。
その他、加害者の男性を含む40~90代の8人が重軽傷を負いましたが、命に別状はありません。
(※文末の「編集後記」でプリウスの自動ブレーキに関する考察を追記しています)
◆31歳母親と3歳の娘
今回の事故で犠牲となったのは、自転車に乗っていた31歳の母親と、3歳の娘でした。
31歳の母親は沖縄県出身で、明るい性格。
3歳の娘さんは活発で、元気が良い女の子だったそうです。
自宅付近ではよく、2人で黒い自転車に乗って公園などに出掛ける姿が目撃されていました。
事故直後、その黒い自転車は、真っ二つに壊れて横たわっていました。
交差点の真ん中で、幼い子供が、自転車の後部座席に収まった状態のまま、倒れていたそうです。
親子が搬送された後、事故現場には、麦わら帽子と子供用のヘルメットが残されていました―――。
◆娘の父親
①娘の父親
犠牲となった母親と娘は、父親を含む3人家族で、事故現場の近くのビルに住んでいました。
父親の年齢は32歳(2019年4月)。
父親は、事故から3日後の4月22日、代理人弁護士を通じて以下のコメントを公表しています。
最愛の妻と娘を同時に失ってからきょうまで、なぜこのようなことになってしまったのか訳が分からず、いまだ妻と娘の死と向き合うことができません。当たり前のように一緒に生きていけると思っていた大切な2人を失い、失意の底にいます
突然、妻と娘を奪われた男性の気持ちは、想像に難くありません。
②父親の記者会見
さらに4月24日の夕方、父親は東京都内で記者会見に臨みました。
最愛の妻と娘を突然失い、ただただ涙することしかできず、絶望しています。娘がこの先どんどん成長し、大人になり、妻と私の元を離れ、妻と寿命尽きるまで一緒にいる。そう、信じていましたが、たった一瞬で私たちの未来は奪われてしまいました。悔しくて悔しくて仕方がありません。この悔しさはどれだけ時間が経っても消えないでしょう。
この日の午前中には、母親と娘さんの告別式が執り行われたそうです。
この日は悲しみの雨が降る中での、最後の別れとなりました…
本来であれば、そんな日に記者会見などしたくなかったでしょう。
今はただ、静かに妻と娘のことだけを考えていたい気持ちだと思います。
それでも記者会見を開いたのは、
妻と娘のような被害者と、私のような悲しむ遺族を今後絶対に出してはいけないとも思いました
という理由からだと思います。
この気持ちを、我々国民一人ひとりが受け止めなくてはなりません。
◆娘の曽祖父
犠牲となった母親と娘の家族は、曽祖父(父親の祖父)と同じビルに住んでいました。
曽祖父の男性はメディアの取材に応え、
今朝も『いってらっしゃい』と2人を送り出したのに…
と声を落としています。
曽祖父の男性は93歳。
同じ高齢者が引き起こした惨事を、どのように見ているのでしょうか。
◆87歳の元院長
今回の事故で暴走した乗用車を運転していたのは、板橋区に住む87歳の男性でした。
男性は現在無職ですが、元々は東大を卒業し、1953年に通産省(当時)に入省したエリート。
通産省の工業技術院長を経て、農機大手クボタの副社長も務めていた人物です。
2015年、通産行政事務功労に対して、瑞宝重光章(ずいほうじゅうこうしょう)を叙勲されています!
元院長が事故を起こしたとき、信号はいずれも乗用車側が赤。
現場にブレーキをかけたような跡はなく、元院長は警察の調べに対し、
アクセルが戻らなくなった
と話しています。
元院長は2017年の免許更新の際、認知機能検査を受けていました。
運転に問題はないと判断されていますが、近所に住む男性は
(男性は)最近、右足をひきずりつえをついていた。駐車場への車庫入れに苦労していた
と話しています。
元院長は1年ほど前、「運転をやめる」と周囲に話していました。
頭はしっかりしていましたが、足が運転に支障をきたしていた可能性があります。
◆元院長の妻
元院長には妻がいて、年齢は男性と同い年。
誕生日も9日違いなのだそうです。
乗用車が暴走した時、助手席には元院長の妻が同乗していました。
事故現場に至る左カーブの辺りで、妻は
危ないよ、どうしたの!?
と声を上げる様子が、ドライブレコーダーに記録されています。
元院長は、自宅マンションの駐車場でもうまく車を止められず、妻が外に出て
もっとハンドル切って!
などとやっていたそうです。
◆元院長の息子
事故直後、元院長は息子さんに電話をかけ、
「アクセルが戻らなくて、人をいっぱいひいちゃった」
と話していました。
前述のとおり、元院長は農機大手の(株)クボタに勤めていましたが、(株)クボタの執行役員には、元院長や息子と同姓の方がいらっしゃいます。
このため、ネットでは、
クボタ執行役員の〇〇さんは、事故を起こした〇〇さんの息子では…?
とのうわさが拡散。
事態を受けた(株)クボタは、
「当社現執行役員の〇〇と、元副社長の〇〇氏の間に縁戚関係等はありません」
とコメントを出しています。
◆まとめ
今回の事故を機に、高齢ドライバーの免許返納が、ふたたび議論されることでしょう。
元院長にもちろん悪意などなく、足が悪かったのであれば、車を使わざるを得なかった事情も想像できます。
しかし、若い母親と幼い娘さんの将来を奪ってしまった罪は、残念ながらあまりにも重いです。
悲しい悲劇が繰り返されないためにどうすべきか、一人一人が考える必要があると思います
今はまず、犠牲となったお2人のご冥福をお祈り申し上げます。
◇編集後記
①自動ブレーキは?
家族の話題からは外れますが、今回の池袋の事故で一点の疑問が湧きあがります。
それは、
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)は作動しなかったのか?
ということです。
事故の写真をよく見ると、事故を起こしたプリウスは「20系」と言われる2代目プリウス(NHW20)であることが分かります。
そして、2003年~2009年に流通していた2代目プリウスに、自動ブレーキの設定はありません。
スバルの自動ブレーキ「アイサイト」が国内で認可され、手ごろな価格設定やCMでのアピールにより普及が始まったのは、2010年以降なのです。
もちろん、現行型プリウス(4代目)には自動ブレーキを含む「Toyota Safety Sense」が装備されているので、4代目であれば今回の事故被害は軽減できたでしょう。
事故そのものが起こらなかった可能性もあります。
②高齢者運転問題の解決策
高齢者の運転に関しては様々な意見があり、今回のような事故が起こると、
「免許を強制的に返納させるべきだ!」
という極端な意見も出てきます。
しかし、運動機能や認知機能が一律ではない高齢者から、年齢だけで返納させるなんて無茶です。
都会はまだ良いかもしれませんが、地方は車がないと本当に大変なのです。
自動車評論家の国沢光宏さんは、
高齢者に対しこういった事故に有効な自動ブレーキ付き(赤信号と一時停止、歩行者対応)の車両を義務付けるべきだと思う。
と書いています。
基本的には、この意見に賛成です。
ただ、自動ブレーキ機能は後付けできないので、車の買い直しが必要ですよね。
この辺の負担をどう考えるかが、もっとも現実的な解決策だと思います。
車種やグレードを選ばなければ、自動ブレーキ(歩行者探知あり)がついた軽自動車は、90万円前後からあるようですね(↓)
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