スコットランドの独立の是非を問う住民投票は日本時間の19日午後、事実上の否決が確定しました。
◆何があったのか?
そもそも、スコットランド独立の是非を問う住民投票が決定したのは2年前の2012年の秋のこと。
スコットランドは1707年にイングランドと合同し、300年にわたりグレートブリテン連合王国を形成してきました。
しかし、スコットランド住民の多数を占めるケルト系のナショナリズムや北海油田の権益などの理由により独立機運が上がり、住民投票で決することになったのです。
住民投票は日本時間の19日午後、開票が進み、全32地区のうち31地区の結果が判明した時点で独立反対が55.42%、賛成が44.58%となり、否決が確定しました。
(スコットランド)
◆否決された理由とは?
事前の世論調査では、独立反対派と賛成派が拮抗しており、投票日が近づくにつれて、賛成派の勢いが増して来ていました。
しかし、実際には予想以上に独立反対派が支持を受けた結果となりました。なぜ、スコットランドの人々はグレートブリテン連合王国に残る決断をしたのでしょうか?
(1)北海油田
まずは、スコットランドの財政的な「かなめ」と言える北海油田の将来性があげられます。
北海油田のイギリスの鉱区では、すでに1990年代には石油生産量がピークを迎えており、2020年代に入ると資源の枯渇が進むと予想されています。
また、陸上と異なり、海底油田は維持するだけでも莫大な費用を要するため、スコットランドだけで維持できるのか疑問がもたれています。
(2)経済
スコットランドは独立後もイギリスの通貨であるポンドを使用する方針でしたが、イギリス政府側はそれを認めないという立場でした。
スコットランドには、「ロイヤルバンク・オブ・スコットランド」や「ロイズ・バンキング」など複数の大手金融機関が本拠を構えています。
しかし、これらの金融機関は、独立となった場合にはロンドンに本拠を移すことを表明していました。
英ポンドを使うことができなくなり、大手金融機関がスコットランドからイングランドに移転してしまった場合には、スコットランドの金融市場は大変混乱することになります。
スコットランド政府が描いているような豊かな経済の実現は非常にあやしいものとなっていました。
(3)EU
スコットランドは、独立後は引き続きEUの加盟国となる姿を描いていました。
しかし、同様に分離独立問題を抱えるスペインなどのEU加盟国は、スコットランド独立に反対の立場であり、スコットランドのEU加盟はきびしいものがありました。
EUのような国際機関から認められなければ、独立した国家としての存在に疑問符がつきます。ヨーロッパ諸国
から国家として認められなければ、外交も立ち行かなくなってしまいます。
(EU国旗)
◆まとめ
このように多くの問題を抱えた状態で、見切り発車をする事に、スコットランド国民はNOを突きつけました。
しかし、有権者の関心は極めて高く、投票率は世界の民主国でも異例の85%前後に達したとみられます。
300年という国家の形を変える大事業です。
もう少し時間をかけて、問題を一つずつ解決していけば、数年後、数十年後にはヨーロッパに新しい国家が誕生しているかもしれません。
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