2016年4月14日に始まった、熊本を中心とした地震は、前震と本震、そして多くの余震に見舞われた災害でした。
今回は、それらの地震の犠牲となった28歳の女性と、そのご家族のお話です。
◆犠牲となった28歳女性
今回の地震で被害が多く集中した、熊本県益城町。
そこに住む28歳の女性も、一連の地震の犠牲となってしまいました。
女性は父親、母親、兄、祖母との5人暮らし。
14日の最初の地震では、自宅の家具などが散乱したものの、家屋は倒壊を免れました。
地震後は、余震による自宅の倒壊を恐れて家族全員、車中で過ごしましたが、15日には電気が通り、入浴も可能に。
「車で寝よう」
母親はなおも警戒していましたが、15日夜は、父・兄が2階で、女性が1階で就寝しました。
◆母との約束・アイドルコンサート
実は、成人式で撮った女性の写真に、笑顔はありません。
「自分の笑った顔が嫌い」
と、笑顔で写った成人式の写真を、わざわざ撮り直したのだそうです。
小学時代はピアノを習っており、『戦場のメリークリスマス』が好きで、人一倍練習していました。
意志の強さがある一方で、「本当はのんびり屋だった」と、お母さんは愛おしみます。
アイドルが好きで、京都や東京で開催されるコンサートに57歳の母親を誘い、一緒に繰り出しました。
つい二、三日前。チケットが取れたら、一緒に行こうねって話をしたのに…
母と娘のささやかな約束は、自然の猛威の前に姿を消しました。
◆そして本震が…
そして16日未明。
激震で1階はつぶれ、天井が女性の頭を直撃します。
がれきの中に女性の姿は見えましたが、懸命の呼びかけに反応はありません。
さらに大きな余震が続いたため、救出作業は難航しました。
がれきの隙間から伸びた女性の手を握りしめながら、母親は「早く出してあげて」と声を震わせました。
生きて-。
そう願って握り続けた娘の手は、無情にも冷たくなりました。
◆瓦礫からの解放
朝になりようやく、重機が到着し、女性は瓦礫から解放されました。
遺体には不思議と大きな怪我はなかったといいます。
苦しまなかったのかなと思うと、少しだけ救いです…
お母さんは、28歳という若さでこの世を去った、娘の無念を振り払うように、こう話しました。
◆まとめ
倒壊した家屋から娘が運び出されると、61歳の父親は
「痛かったね」
と頭をなでました。
母親は亡きがらに寄り添うと、こう語りかけました。
「寒い中何時間も出してあげられなくてごめんね」
女性は若くして旅立ってしまいましたが、家族の絆は、今後も消えることはありません。
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